“## 猫の腎臓病: 愛猫の生活の質を守るために

「沈黙の臓器」と呼ばれる腎臓は、血液中の老廃物をろ過し、尿として体外へ排出する、生命維持に欠かせない重要な役割を担っています。猫は、この腎臓が病気に侵されやすい動物です。初期段階では目立った症状が現れにくい「沈黙の病気」であるため、飼い主が異変に気付いた時には病状がかなり進行しているケースも少なくありません。

今回は、猫の腎臓病について、症状、原因、治療法、予後、そして日頃のケアの重要性について詳しく解説することで、愛猫のQOL(生活の質)維持に役立つ情報提供を目指します。

**1. 猫の腎臓病: 見逃さないで!愛猫の小さな変化**

腎臓は、一度機能が低下すると自然に回復することが難しい臓器です。そのため、早期発見・早期治療が非常に重要となります。しかし、初期段階では、はっきりとした症状が見られないことが多く、食欲不振や体重減少など、他の病気と共通する症状が出ることも多いため、見過ごされてしまうことがあります。

愛猫の小さな変化を見逃さず、少しでも異変を感じたら、早めに動物病院を受診することが大切です。

**主な症状:**

* **尿の変化:**
* **頻尿:** いつもより頻繁にトイレに行く、またはトイレに行く仕草をする
* **多尿:** 1回あたりの尿量が増える
* **血尿:** 赤っぽい、または茶色っぽい尿が出る
* **尿の色の変化:** 薄い色になったり、逆に濃くなる

* **飲水量の増加:** 腎臓のろ過機能が低下すると、体内の水分を保持することが難しくなり、喉の渇きを訴えるようになる。

* **食欲不振・体重減少:** 腎臓病が進行すると、食欲不振や体重減少が見られるようになる。

* **嘔吐・下痢:** 体内に蓄積された老廃物が原因で、吐き気や嘔吐、下痢を起こすことがある。

* **口内炎・口臭:** 体内の老廃物が唾液に混じって口臭が強くなったり、口内炎を起こしやすくなる。

* **脱水症状:** 飲水量が増加しても、脱水症状が見られることがある。皮膚の弾力がなくなったり、口の中が乾燥したりする。

* **貧血:** 腎臓は、赤血球の生成を促すホルモンを分泌しているため、腎機能が低下すると貧血を起こしやすくなる。

* **元気消失・活動性低下:** 全身倦怠感や食欲不振から、元気がなくなり、活動性が低下する。

* **神経症状:** 腎臓病が進行すると、尿毒症を引き起こし、痙攣や意識障害などの神経症状が現れることがある。

**2. 猫の腎臓病: 原因と種類**

猫の腎臓病は、その原因や進行度によって、大きく以下の3つに分類されます。

**2-1. 急性腎臓病:** 数時間~数日の間に急激に腎機能が低下する病気。原因としては、中毒、感染症、尿路閉塞、ショックなどが挙げられる。早期に治療を行えば、回復の可能性が高い。

**2-2. 慢性腎臓病:** 数ヶ月~数年かけて徐々に腎機能が低下していく病気。老齢の猫に多くみられ、原因としては、加齢による腎臓の老化、遺伝的要因、慢性的な炎症などが考えられる。完治は難しいが、適切な治療と食事管理によって、進行を遅らせ、症状を緩和することができる。

**2-3. その他の腎臓病:** 先天性の腎臓の形成異常、腫瘍、免疫介在性腎炎などが挙げられる。

**3. 猫の腎臓病: 多角的な治療法**

腎臓病の治療は、原因や症状、進行度合いによって異なり、多岐にわたります。完治が難しい病気ですが、適切な治療とケアを続けることで、進行を遅らせ、愛猫のQOL(生活の質)を維持することが期待できます。

**3-1. 治療法:**

* **食事療法:** 腎臓への負担を軽減するために、タンパク質、リン、ナトリウムを制限した療法食を与える。
* **水分補給:** 脱水を防ぐために、十分な水分を摂取させる。食欲がない場合は、皮下輸液や点滴を行う場合もある。
* **薬物療法:** 腎臓の働きを助ける薬、血圧を下げる薬、貧血を改善する薬、吐き気を抑える薬などを、症状に合わせて使用する。
* **その他の治療:** 原因や症状によっては、抗生物質の投与、外科手術などを行う場合もある。

**3-2. 対症療法:**

腎臓病が進行すると、様々な症状が現れます。それぞれの症状を和らげるための対症療法も重要になります。

* **食欲不振・嘔吐:** 吐き気止めや食欲増進剤の投与、療法食への切り替え
* **貧血:** 鉄剤の投与、エリスロポエチン(EPO)製剤の投与
* **高リン血症:** リン吸着剤の投与

**4. 猫の腎臓病: 予後と飼い主ができること**

腎臓病は、残念ながら完治が難しい病気です。しかし、早期発見・早期治療、そして日々の適切なケアによって、進行を遅らせ、愛猫のQOL(生活の質)を維持することが期待できます。

**4-1. 予後を左右する要因:**

* **病状の進行度:** 早期に発見し、治療を開始できれば、予後は良好となります。
* **年齢や健康状態:** 若い猫や健康な猫ほど、治療の効果が出やすく、回復しやすい傾向があります。
* **飼い主の協力:** 獣医師の指示を守り、根気強く治療を続けること、そして日々のケアを丁寧に行うことが重要です。

**4-2. 愛猫のためにできること:**

* **定期的な健康チェック:** 特にシニア期に入った猫は、定期的に動物病院で健康チェックを受け、早期発見に努めましょう。
* **生活環境の改善:** ストレスを軽減するために、安心できる生活環境を整えてあげましょう。
* **食事管理:** バランスの取れた食事を与え、肥満を防ぎましょう。腎臓病と診断された場合は、療法食への切り替えも検討しましょう。
* **十分な水分補給:** 常に新鮮な水を飲めるようにして、水分摂取を促しましょう。

猫の腎臓病は、飼い主の努力次第で、進行を遅らせ、愛猫のQOL(生活の質)を維持できる病気です。愛猫の変化を見逃さず、日頃から健康管理に気を配り、愛情を持って接することで、少しでも長く、幸せな時間を共に過ごせるようにサポートしてあげてください。 ”