猫の糖尿病: 愛猫と長く幸せに過ごすために

かつては稀な病気と考えられていた猫の糖尿病ですが、近年では室内飼育の増加や猫の平均寿命の延長に伴い、増加傾向にあります。猫の糖尿病は、早期発見・適切な治療によって、多くの場合コントロールが可能であり、愛猫と長く幸せに過ごすことができます。

症状: 見逃さないで! 愛猫からのサイン

糖尿病の症状は、初期段階では非常に軽度であるため、飼い主が気づきにくいケースも少なくありません。しかし、進行すると様々な症状が現れ始めます。

代表的な症状
多飲多尿:のどの渇きを訴えるように水をたくさん飲むようになり、それに伴い尿量も増える。
食欲増加と体重減少:食欲旺盛にもかかわらず、体重が減っていく。
元気消失、活動性低下:元気がなくなり、動きが鈍くなる。
後ろ足の脱力、ふらつき歩行:神経障害が起こり、後ろ足に力が入りにくくなる。
嘔吐:糖尿病性ケトアシドーシスなどの合併症を引き起こすと、嘔吐が見られることがある。

特に注意が必要な猫
– 中高齢の猫 (7歳以上)
– 肥満の猫
– 去勢・避妊手術を受けた猫
– 特定の猫種 (バーミーズなど)
– 他の内分泌疾患 (甲状腺機能亢進症など) を患っている猫

原因: なぜ糖尿病になってしまうの?

猫の糖尿病は、インスリンというホルモンの分泌不足または作用不足によって、血液中の糖分(グルコース)が細胞に取り込まれず、高血糖状態が続くことで引き起こされます。
インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のグルコースを細胞に取り込み、エネルギー源として利用するために重要な役割を担っています。

猫の糖尿病のタイプ
– インスリン依存性糖尿病 (1型糖尿病):膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる。
– インスリン非依存性糖尿病 (2型糖尿病):インスリンは分泌されているものの、その量が不足していたり、細胞がインスリンに反応しにくくなっている。

猫の糖尿病の多くは、2型糖尿病に分類されます。

糖尿病の診断は、獣医師による視診、問診、そしていくつかの検査結果を総合的に判断して行われます。

代表的な検査

尿検査:尿中の糖、ケトン体をチェックします。糖尿病の場合、尿糖が陽性になることがあります。
血液検査:血糖値を測定します。空腹時血糖値が持続的に高い場合、糖尿病の疑いが強まります。
フルクトサミン検査:過去2~3週間の血糖値を反映する指標で、糖尿病の診断や治療効果の判定に役立ちます。

治療: 愛猫に最適な治療法を見つけよう!
糖尿病の治療は、大きく分けて食事療法、運動療法、インスリン療法の3つがあります。

食事療法
低炭水化物・高タンパク質のフードへの切り替え
食餌回数を1日2回に減らす
おやつは与えない、または糖尿病用のものを少量
運動療法
適度な運動は、インスリン感受性を向上させる効果が期待できます。
インスリン療法
インスリン依存性糖尿病 (1型糖尿病) や、食事療法や運動療法だけでは血糖値が十分にコントロールできない場合に、インスリン注射が必要になります。
インスリン製剤には、種類や作用時間などが異なるものがあります。獣医師と相談の上、愛猫に最適なものを選択します。
治療の目標
血糖値のコントロール:高血糖による症状を改善し、合併症を予防するために、血糖値を正常範囲内に維持することが重要です。
生活の質 (QOL) の維持・向上:食事制限やインスリン注射など、愛猫への負担を最小限に抑えながら、快適な生活を送れるようサポートすることが重要です。

猫の糖尿病の治療費用は、症状の程度や治療方法によって異なりますが、一般的な目安を以下に示します。

猫の糖尿病の治療費用
診察料:約2,000円〜5,000円
– 獣医師による初診や病歴の確認。
検査費用(血液検査や尿検査):約5,000円〜10,000円
– 糖尿病の診断や合併症の確認に必要。
インスリン治療(インスリン製剤):約4,000円〜15,000円(1ヶ月分)
– 使うインスリンの種類やブランドによって異なる。
食事療法(特殊療法食):約3,000円〜6,000円(1ヶ月分)
– 糖尿病管理用のフードが必要です。
定期的フォローアップ: 約2,000円〜5,000円(再診1回ごとの目安)
総合的な費用:糖尿病管理には、15,000円〜40,000円程度の費用がかかることが多いですが、継続的な治療や管理が必要になるため、長期的にはさらに費用がかかる可能性があります。具体的な費用については、かかりつけの獣医師に相談することが重要です。

定期的なモニタリング

治療開始後は、定期的に動物病院を受診し、血糖値のチェック、尿検査、身体検査などを行い、治療効果や合併症の有無を確認します。

予後: コントロール可能な病気!

糖尿病は完治が難しい病気ではありますが、早期発見・適切な治療によって、多くの猫が健康な状態を長く維持することができます。

予後に影響する要因:
– 糖尿病のタイプ
– 病気の進行度
– 合併症の有無
– 飼い主の治療への協力

愛猫と長く幸せに過ごすために
– 定期的な健康チェック
– 適正体重の維持
– バランスの取れた食事
– ストレスの少ない生活環境の提供

猫の糖尿病は、飼い主の献身的なケアと、獣医師との連携によって、コントロール可能な病気です。愛猫の変化を見逃さず、早期発見・早期治療を心がけ、共に健やかな日々を過ごしましょう。