“## 猫の糖尿病: 愛猫と長く幸せに過ごすために

かつては稀な病気と考えられていた猫の糖尿病ですが、近年では室内飼育の増加や猫の平均寿命の延長に伴い、増加傾向にあります。猫の糖尿病は、早期発見・適切な治療によって、多くの場合コントロールが可能であり、愛猫と長く幸せに過ごすことができます。

ここでは、猫の糖尿病の症状、原因、治療、予後について詳しく解説し、飼い主の不安解消と、愛猫との健やかな暮らしをサポートします。

**1. 症状: 見逃さないで! 愛猫からのサイン**

糖尿病の症状は、初期段階では非常に軽度であるため、飼い主が気づきにくいケースも少なくありません。しかし、進行すると様々な症状が現れ始めます。

**1.1. 代表的な症状:**

* **多飲多尿:** のどの渇きを訴えるように水をたくさん飲むようになり、それに伴い尿量も増える。
* **食欲増加と体重減少:** 食欲旺盛にもかかわらず、体重が減っていく。
* **元気消失、活動性低下:** 元気がなくなり、動きが鈍くなる。
* **後ろ足の脱力、ふらつき歩行:** 神経障害が起こり、後ろ足に力が入りにくくなる。
* **嘔吐:** 糖尿病性ケトアシドーシスなどの合併症を引き起こすと、嘔吐が見られることがある。

**1.2. 特に注意が必要な猫:**

* 中高齢の猫 (7歳以上)
* 肥満の猫
* 去勢・避妊手術を受けた猫
* 特定の猫種 (バーミーズなど)
* 他の内分泌疾患 (甲状腺機能亢進症など) を患っている猫

**2. 原因: なぜ糖尿病になってしまうの?**

猫の糖尿病は、インスリンというホルモンの分泌不足または作用不足によって、血液中の糖分(グルコース)が細胞に取り込まれず、高血糖状態が続くことで引き起こされます。

**2.1. インスリンの役割:**

インスリンは、膵臓から分泌されるホルモンで、血液中のグルコースを細胞に取り込み、エネルギー源として利用するために重要な役割を担っています。

**2.2. 猫の糖尿病のタイプ:**

* **インスリン依存性糖尿病 (1型糖尿病):** 膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンがほとんど分泌されなくなる。
* **インスリン非依存性糖尿病 (2型糖尿病):** インスリンは分泌されているものの、その量が不足していたり、細胞がインスリンに反応しにくくなっている。

猫の糖尿病の多くは、2型糖尿病に分類されます。

**2.3. 糖尿病のリスク因子:**

* **肥満:** 肥満は、インスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病のリスクを高めます。
* **遺伝:** 特定の猫種は、遺伝的に糖尿病になりやすい傾向があります。
* **加齢:** 加齢に伴い、膵臓の機能が低下し、インスリン分泌量が減少することがあります。
* **ホルモン異常:** 甲状腺機能亢進症やクッシング症候群などのホルモン異常は、糖尿病のリスクを高めます。
* **膵炎:** 膵炎によって膵臓がダメージを受けると、インスリン分泌量が減少することがあります。
* **特定の薬剤:** ステロイド剤などの特定の薬剤は、糖尿病のリスクを高める可能性があります。

**3. 診断: さまざまな検査で総合的に判断!**

糖尿病の診断は、獣医師による視診、問診、そしていくつかの検査結果を総合的に判断して行われます。

**3.1. 代表的な検査:**

* **尿検査:** 尿中の糖、ケトン体をチェックします。糖尿病の場合、尿糖が陽性になることがあります。
* **血液検査:** 血糖値を測定します。空腹時血糖値が持続的に高い場合、糖尿病の疑いが強まります。
* **フルクトサミン検査:** 過去2~3週間の血糖値を反映する指標で、糖尿病の診断や治療効果の判定に役立ちます。

**4. 治療: 愛猫に最適な治療法を見つけよう!**

糖尿病の治療は、大きく分けて食事療法、運動療法、インスリン療法の3つがあります。

**4.1. 食事療法:**

* 低炭水化物・高タンパク質のフードへの切り替え
* 食餌回数を1日2回に減らす
* おやつは与えない、または糖尿病用のものを少量

**4.2. 運動療法:**

* 適度な運動は、インスリン感受性を向上させる効果が期待できます。

**4.3. インスリン療法:**

* インスリン依存性糖尿病 (1型糖尿病) や、食事療法や運動療法だけでは血糖値が十分にコントロールできない場合に、インスリン注射が必要になります。
* インスリン製剤には、種類や作用時間などが異なるものがあります。獣医師と相談の上、愛猫に最適なものを選択します。

**4.4. 治療の目標:**

* **血糖値のコントロール:** 高血糖による症状を改善し、合併症を予防するために、血糖値を正常範囲内に維持することが重要です。
* **生活の質 (QOL) の維持・向上:** 食事制限やインスリン注射など、愛猫への負担を最小限に抑えながら、快適な生活を送れるようサポートすることが重要です。

**4.5. 定期的なモニタリング:**

* 治療開始後は、定期的に動物病院を受診し、血糖値のチェック、尿検査、身体検査などを行い、治療効果や合併症の有無を確認します。

**5. 予後: コントロール可能な病気!**

糖尿病は完治が難しい病気ではありますが、早期発見・適切な治療によって、多くの猫が健康な状態を長く維持することができます。

**5.1. 予後に影響する要因:**

* 糖尿病のタイプ
* 病気の進行度
* 合併症の有無
* 飼い主の治療への協力

**5.2. 愛猫と長く幸せに過ごすために:**

* 定期的な健康チェック
* 適正体重の維持
* バランスの取れた食事
* ストレスの少ない生活環境の提供

猫の糖尿病は、飼い主の献身的なケアと、獣医師との連携によって、コントロール可能な病気です。愛猫の変化を見逃さず、早期発見・早期治療を心がけ、共に健やかな日々を過ごしましょう。”