“## 猫の心臓病: 静かなる脅威から愛猫を守るために

「サイレントキラー」とも呼ばれる心臓病は、猫にとっても決して珍しい病気ではありません。初期段階では無症状のことも多く、気づかぬうちに病状が進行し、命に関わる危険性も孕んでいます。しかし、飼い主が心臓病の知識を深め、愛猫の変化に注意深く向き合うことで、早期発見・早期治療に繋げ、愛猫の生活の質(QOL)を維持しながら、共に過ごす時間を長く、豊かなものにすることができます。

今回は、猫の心臓病について、症状、原因、治療法、予後、そして日頃のケアの重要性について、詳しく解説していきます。

**1. 猫の心臓病: 見逃さないで!愛猫からのサイン**

心臓は、全身に血液を送り出すポンプの役割を担う、生命維持に欠かせない重要な臓器です。心臓病は、この心臓の構造や機能に異常が生じることで起こり、様々な症状を引き起こします。

猫は、自身の不調を隠すことが得意な動物です。そのため、飼い主が心臓病のサインに気づくのは容易ではありません。しかし、日頃から愛猫の様子をよく観察し、以下の様な変化が見られた場合は、心臓病の可能性を疑い、早めに動物病院を受診することが重要です。

**主な症状:**

**1-1. 呼吸器症状:**

* **呼吸困難:** 呼吸が速くなったり、浅くなったりする。開口呼吸(口を開けて呼吸する)、腹式呼吸(お腹を大きく動かして呼吸する)が見られることもある。
* **咳:** 特に夜間や明け方に多く見られる。興奮時や運動時に悪化する傾向がある。
* **チアノーゼ:** 舌や歯茎の色が青紫色になる。酸素不足の状態を示している。

**1-2. 循環器症状:**

* **心拍数の変化:** 心拍数が異常に速くなったり、遅くなったりする。不整脈が起こることもある。
* **チアノーゼ:** 上記参照。
* **失神:** 一時的に意識を失う。脳への血流が不足することで起こる。
* **腹部の膨満:** 心臓病が進行すると、腹水が溜まり、お腹が膨らんでくることがある。

**1-3. その他の症状:**

* **食欲不振:** 心臓病が進行すると、食欲が低下したり、食べなくなったりすることがある。
* **体重減少:** 食欲不振や代謝異常により、体重が減少することがある。
* **元気がない:** 疲れやすくなり、活動性が低下することがある。
* **ぐったりする:** 重症化すると、ぐったりして動かなくなることがある。

**2. 猫の心臓病: 様々な原因と種類**

猫の心臓病には、様々な種類があり、それぞれ原因や症状、治療法が異なります。

**2-1. 猫に多い心臓病の種類:**

* **肥大型心筋症 (HCM):** 心筋が異常に肥大することで、心臓の拡張機能が低下し、血液を十分に送り出せなくなる病気。猫に最も多い心臓病。
* **拘束型心筋症 (RCM):** 心筋が硬くなることで、心臓が十分に拡張できなくなる病気。
* **拡張型心筋症 (DCM):** 心筋が薄く伸びてしまい、心臓の収縮力が低下する病気。大型犬に多く、猫では比較的まれ。
* **僧帽弁閉鎖不全症 (MR):** 心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁がうまく閉じなくなり、血液が逆流してしまう病気。小型犬に多く、猫では比較的まれ。
* **先天性心疾患:** 生まれつき心臓に異常がある病気。

**2-2. 猫の心臓病の原因:**

* **遺伝的要因:** HCM や RCM など、一部の心臓病は遺伝的な要因が大きいと考えられている。特定の猫種(メインクーン、ラグドール、ペルシャなど)では、これらの心臓病の発症率が高い。
* **加齢:** 加齢に伴い、心臓の機能が低下し、心臓病のリスクが高まる。
* **甲状腺機能亢進症:** 甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気。心臓に負担をかけ、心臓病を引き起こすことがある。
* **高血圧:** 血圧が高い状態が続くと、心臓に負担がかかり、心臓病のリスクが高まる。
* **感染症:** 一部の細菌やウイルス感染症が、心臓に炎症を起こし、心臓病を引き起こすことがある。

**3. 猫の心臓病: 治療法と生活管理**

心臓病の治療は、原因、種類、重症度、猫の年齢や健康状態などを考慮して、獣医師と飼い主とで相談しながら、適切な治療計画を立てていきます。

**3-1. 主な治療法:**

* **薬物療法:** 心臓の働きを改善する薬、不整脈を抑える薬、血圧を下げる薬、利尿剤などを症状に合わせて使用する。
* **食事療法:** 心臓病の猫のために作られた療法食を与える。ナトリウム制限など、心臓への負担を軽減する効果が期待できる。
* **外科手術:** 先天性心疾患など、一部の心臓病では、外科手術が必要となる場合がある。
* **サプリメント:** タウリンやL-カルニチンなどのサプリメントは、心臓の健康維持に役立つとされる。

**3-2. 日常生活での注意点:**

* **安静:** 心臓への負担を軽減するために、激しい運動や興奮を避け、安静を心がける。
* **ストレス軽減:** ストレスは心臓に負担をかけるため、猫が安心して過ごせる環境作りが重要。
* **体重管理:** 肥満は心臓に負担をかけるため、適正体重を維持する。
* **定期的な健康チェック:** 早期発見・早期治療のために、定期的な健康チェックを受け、心臓の状態をモニターする。

**4. 猫の心臓病: 予後と飼い主の心構え**

心臓病は、完治が難しい病気ですが、早期発見・早期治療、そして適切なケアを続けることで、進行を遅らせ、愛猫のQOL(生活の質)を維持しながら、共に過ごす時間を長くすることができます。

**4-1. 予後を左右する要因:**

* **心臓病の種類:** HCM や RCM など、進行性の心臓病は、予後が悪い場合が多い。
* **病状の進行度:** 早期に発見し、治療を開始できれば、予後は良好となる。
* **治療への反応:** 薬や食事療法などの治療に、どれだけ効果が見られるか。
* **合併症の有無:** 他の病気を持っている場合や、合併症を引き起こした場合、予後が悪化する可能性がある。
* **飼い主の協力:** 獣医師の指示を守り、根気強く治療を続けること、そして日々のケアを丁寧に行うことが重要。

**4-2. 愛猫と向き合うために:**

猫の心臓病は、飼い主にとって不安や心配の多い病気ですが、愛猫の病気と向き合い、愛猫が安心して生活できるよう、精一杯の愛情を注ぎ、サポートしていくことが大切です。

**※上記の情報は一般的なものであり、全ての猫に当てはまるわけではありません。愛猫の症状や治療法については、必ず獣医師にご相談ください。** ”